2010年10月22日

「ぼっこ」を描いた頃1.

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インテリアや雑貨のスタイリストをしていた頃、婦人画報社「モダン・リビング」の仕事はかなりのボリュームがあった。編集部の空気は和気あいあいとしていて、仕事の上がりにはいつもどこかで飲んでいた。絵を描くようになってからも、しばらくはスタイリストをしていたので、個展にはみなさんよく来て下さった。モダンリビングから福音館に移って、児童書の編集をするようになった一戸盟子さんも個展に来て下さった。

一戸さんは「おおきなポケット」という、小学校低学年向きの雑誌の編集をしていらしたのだが、ある日、私に挿絵を描きませんかと打診してきた。

えっ。自分の絵だって何ひとつ確立出来てないのに、それ無理かも。無理かも、と尻込みする私に、絵本をどっさり送って

「描けるわよ。描けるわよ」と言うのだ。

ところが、私は実は絵がヘタなのだ。サラサラとイラストを描くようなタイプではなく、脂汗を流してぜいぜい言いながら、なんとか一枚描き上げるのがやっと、という程度なんである。

おまけに児童書は細部のチェックがきびしい。連載の時は、何度もダメ出しがあり、2度の色校正のあと、とんでもない間違いに気がついたり、と今までと全くちがう神経を使い果たして疲労困憊した。

かくして連載ののち、描き直しもして、たかどのほうこ著「ねこが見た話」が刊行された。

連載の頃の描けなくって辛かった思いだけが残り、その後あまり手にしなかったのだが、ツィッターで田川ミメイさんが取り上げて下さったので、あらためて見てみると、これがなかなかいいのだ。細かいところまで楽しんで描きこんでいる。あんな状況でおもしろがっていたとは、我ながらなかなかタフな奴、と自分をナデナデしてしまった。

おかげでなかなかのロングセラーになっているらしい。

「ねこが見た話」が出てしばらくしたころ、偕成社の別府章子さんから連絡があった。

富安陽子さんの書き下ろしの読み物「ぼっこ」の挿絵の依頼だった。ゲラを送ってもらい、一気に読んで惚れてしまった。

東京から大阪府下の山の中にある稲生という町に引っ越ししてきた少年が、ふるい屋敷で「ぼっこ」(座敷童子)に会い、慣れない環境や不思議な出来事に立ち向かい、少年時代を乗り越えてゆくという話。

胸の底で涙がにじみ、あふれずにしみわたってゆくような読みものだ。富安さんの物語を描く力に強く押され、挿絵を描きはじめた。登場人物はみな、魅力いっばいだ。


ところが、この挿絵を描きはじめた私は、実生活でとんでもない状況におちいっていた。(続









posted by 瓜南直子 at 22:02| Comment(0) | 絵とその周辺に棲むもの | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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