2011年02月22日

『寝目物語』第十二夜 【くま】



くまM.jpg




【くま】


夜おそく、戸を叩く音がする。
開けると、そこにくまが立っていた。

だれなのと聞くと、
くまはか細い声で、遊んでくれるって言ったのにと、もじもじ言う。

でも私、こんなくま知らないし、
そんな約束もしてないわと戸を閉めた。
くまはずっと、外に立ってるようだったけど、
蹴破って襲ってくるタイプでもないみたいだから、
鍵をかけて寝てしまった。




古い壁に囚われて泣いていたわたしを救ってくれたのは、一匹の大きな熊だった。
壁に巣喰った物の怪を一吠えで追い出し、大きな手でばうんっと壁をこわすその力。
わたしはほれぼれと見上げて言った。
助けてくれてありがとう、お礼に一緒に遊んであげたいけど、
その大きな体も牙も爪も声も、わたし怖いの。

熊はしばらく考えて、九年待ってほしいと言った。
うんと修業して怖いのはなくすし、
牙も爪も抜くから。


きっとね、待ってるねと、
わたしは手を振りながら、帰ってゆく熊に声をかけた。



あれからちょうど九年たったんだ、と覚めかけの夢でつぶやいた。
くまは間違えて来てしまったらしい。
起きてる私は水くみやお稽古に忙しいのだ。
こっちに訪ねて来られても、こまる。

でも九年もかかって、たいへんな修行をしたんだと思うと、胸が熱くなった。

ゆうべはかわいそうなことしたかな。
よし、きのこ狩りに連れていってあげようっ、
と戸を開けてみると、
そこにはもう、あの小さなくまはいなかった。






                          ・・・・・・・・・・・・・



『寝目物語』(いめものがたり)ギャラリー・ミリュウ刊

お問い合わせはコチラ http://www.art-index.net/milieu.html


詳細はコチラ →http://bit.ly/eXNKQm







posted by 瓜南直子 at 10:12| Comment(4) | 寝目物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
寝目物語は実に素敵な悪夢です。
Posted by idebuchi4950 at 2011年02月22日 22:38
idebuchi4950 さん。

ありがとうございます。ますます夢力 増しています。先日は大笑いして自分の笑い声で目が覚めました。ただ、最近は覚えていないのが、モンダイです。覚めかけの時は、覚えとかなくちゃと反芻してるのですが....。
Posted by 瓜南直子 at 2011年02月24日 22:24
不思議な絵が魅力です。
また訪問しますね。
Posted by 根保孝栄・石塚邦男 at 2015年01月27日 03:48
覚えている夢、忘れる夢・・・夢は見たはずなりに思い出せなかったり・・・
現実と夢の境界・・・あの世とこの世の境界・・・
Posted by 根保孝栄・石塚邦男 at 2016年08月07日 16:41
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。