2011年03月27日

もう一度 蜻蛉島の美しさを。




封印M.jpg
「封印」M8号「表現者」36号 表紙原画




「なんかね、今、瓜南さんの絵を見てもらいたいと思ったんですよ。私も見ていたいと思ったし」

そんな電話がかかってきた。
神保町画廊の佐伯千佳さんからである。
佐伯さんは、「寝目物語」をプロデュースしてくれた「ギャラリー・ミリュウ」のスタッフだった方だが、
昨年独立して神保町に新しく開廊された。
個展の時は必ず観にきてくださっていたし、たぶん私の絵を気に入って下さってるんだ、
という感触はあったものの、今回、この時期でのお話に気持ちが熱くなった。

大震災、原発の事故と日本の未来がどうなってゆくのか不安でいっぱいの今、
画家や彫刻家、アーティストたちも、いったい自分に何ができるのか、の自問自答と、
役にたたなさへの忸怩たる思いに身もだえしている。

ミュージシャンならチャリティーコンサートをして売上を義援金として寄付できる。
物書きや漫画家なら、島田雅彦さんが中心となって始めた運動「復興書店」がある。
これは、作家たちが自著にサインをして送れば、復興書店は商品リストを作り、
それをウェブにアップする。あとは読者がお気に入りの本を買う。
売上から管理コストを差し引いた額を赤十字に寄付する。
つまり、「本を買えば、募金したことになる」というシステムだという。

しかし、美術家は商品としての価値と流通のシステムがあまりに独特すぎて、
作家個人でできることなんてないに等しい。

実際、真摯に美術をやっている人間にとって、制作の大前提は自己救済なのである。
だれかのために、といえばかなり抽象的な意味での
全人類の魂の救済の1mmほどの役にたつであろうか程度なんである。

twitterを見ていても、そういう作家たちの生身の声が浮かびあがってくる。
郵便局に行くたびに寄付をする。自分にできることはそれしかない。
あとはアトリエにこもってひたすら制作している。とか、
「誰かのために、なんて嘘っぱちはオレは言えない」
「救済なんて、おこがましい言葉を使うなよ」
「こんな時に芸術なんて何の役にもたたないよな」などなど。

おそらく私はかなり図太い。何よりも制作し続けられることを優先するだろう。
もう何年も、なんとか今月はしのげた的な生活をしているので、いつまで維持できるかわからないけど、
制作を続けることだけを大前提に考える。



twitterやfacebookにも書いたことだけど、
1995年のオウムと神戸の震災の時にあふれる情報から身を守る方法を見つけた。
それは単にテレビを切ることだった。

これでもかと押し寄せてくる映像の波にのまれ、テレビの前から動けなくなった私は、
一日中ベッドの中でテレビを見ていた。
頭の中は痛ましい映像に埋めつくされ、2ヶ月くらい何もできなかった。
オウムがワイドショーや特番で繰り返されるようになって、ようやく自分のおかしさに気がついた。
「目をそらしてはいけない」思いだけにとらわれていたのだ。
そして私はモジュール線をはさみで切った。それきりテレビを見ていない。
もちろん、現実を確認することは大切だ。
けれど、被災者の現実がテレビで共有できるわけではない。
へとへとになって自分の思い上がりに気が付いた。
自分の立っている場所で、なすべきことをするしかないのだ。
もちろん、痛い思いはみな同じ。
けど、立ち直れる人から立ち直って、すべきことをするしかない。
のまれてしまっては一歩も進めない。



思うに絵描きは、芸術家は、芸術の神に嫁いでしまった身なんではないかと思うのだ。
だから、他にはなんにもできない。神からお声がかかる間は作品を作り続けるしかないのだ。
今回は局地的な震災どころではなく、この資源のない島国、日本につきつけられた諸刃の刃だ。
どっちにどう転んでも、細く長く厳しすぎる道を歩くしかない。

よりにもよって、世界で唯一の被爆国が自ら選んだ原子力発電所で首をしめることになろうとは。
けれど、これだけ核問題、核による被害を生身で提供した国は他にはない。

私は自分の国を愛しているので、よい見方しかしないが、
ある意味「核に身をさらした国」になってしまったような気もする。




地震の直前に「表現者」にコラムの原稿を送った。
次号からは表紙のことばとして、絵について書くことになった。

その末尾を私はこう結んでいる。



「今号の表紙「封印」は、面の中に閉じ込められていた娘が、
まじないを解かれて初めて自分の目で世界を見た、と言うイメージを描いてみた。
彼女の眼にはどう見えるのだろうか、沈みそうなこの蜻蛉の島は。


どうかそのまっさらな目で、蜻蛉島の美しさをもう一度、島の人々に伝えておくれ。

ここは、月と「かな」に護られた島だと、教えておくれ。」




posted by 瓜南直子 at 15:16| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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