2011年10月30日

「観○光」こぼれ話 その2−中原さんがやってきた−


雲のうえ.jpg





中原さんがやってきた。


中原蒼二さんは、うちから500歩のところにある立ち呑み「ヒグラシ文庫」の店主である。
「ヒグラシ文庫」は、永く行き場を失くしていた私に、居場所を与えてくれたありがたい店だ。

ここは、よくある立ち呑みとはまるで違う。何から何まで違う。
まず、立ち呑み屋なのに古本屋を内蔵している。
そして、立ち呑みだから、安いんだから、という投げやりなメニューがいっさいないのである。

豆腐は毎日手作り。
冷奴とは別の塩豆腐にかける「塩だれ」も、
濃い出汁と塩と淡口醤油などを合わせた中原さん特製のもの。旨味たっぷり。
ポテトサラダも北海道直送のじゃがいもで中原さんがていねいに作る。ほんとにおいしい。

塩辛も酒盗も手作り。鯖の燻製も手作り。小ぶりな鯖をさばいて塩で〆て、
さらに塩出しをしてから、燻製にかけるのだという。
私は、これを玉ねぎとサワークリームと一緒にパンにはさんで食べたい。
鯖の燻製をお持ち帰りして、家で作って食べればいいのだけど、
なんだかおもしろくない。
材料を持ち込んで、見せびらかしながら食べたいという
悪い嗜好を持つ、店としてははなはだ迷惑な客であるのだ私は。

でも中原さんは「どうぞ、かまいませんよ」と言って下さるので、
そのうち実現したいとたくらんでおるのだが、
そういう時に限って、お客さんが一人もいなかったりするんだ、これが。

鯖の中骨は船場汁になる。カボスも添えられている。

鶏の変わりつくねは、頸の軟骨が入っていて食感が楽しい。

さんまの刺身もおいしかった。さんまの刺身がこんなに甘いなんて、とただただ感動。
つみれ汁も絶品だった。

私が「熟女のブルース」と呼ぶ「いちぢくとチーズ」がまたなんとも…。
カマンベールとブリーやブルーチーズをブレンドした特製チーズを乾燥いちぢくにはさんである。
これがなんとも「いけませんねェー」という味なのである。
これは圧倒的にワイン向き。

そして圧巻は「まぐろの血合いの燻製」。
生のまぐろが手に入った時だけ、中原さんが作る、ほかでは食べたことのないもの。
血合いの血を抜きながら、旨味は逃さぬように下味をつけて燻製にかける。

これらがすべて200円〜350円という値段。
メニューにない酒盗豆腐を頼んだら、300円で受けてくれた。

営業中も仕込みをしていたりするので、そのていねいな仕事を見ながら呑むのがまた楽しい。
見ているからこそ、こうして解説できるわけで。

いったい、なんなんだ中原さんて。
こんなことができる人っていったい、いったい…...。



ある時、「ポチさん、ちょっと差し上げたいものがあるんです」と言う。
なになに?と聞くと、「いや、つまらない、こんなちょっとした小冊子なんですが」
と言って渡されたのは「雲のうえ」という北九州市の情報誌。

中原さんは多くを語らないが、この本をいただいてから、
しだいに中原さんの半生が解き明かされていった。


「雲のうえ」が他の雑誌に与えた影響は、はかりしれないものがあるのだとわかった。
本屋さんで見かける、雑誌のある潮流の源泉がここにあったのだ。
それとは知らず私は、この手の本作りって最近の流行りなんだなあ、と
「雲のうえ」の子や孫たちを見ていたのだ。

中原さんは「雲のうえ」の仕掛け人、プロデューサーである。

中原さん.jpg




10月17日の夕刻,中原さんは四条新京極にあらわれた。
お互い、高級店などお金を出しておいしいのはあたりまえ、
それをありがたがるのは野暮である、という暗黙の了解がある。
そして何より中原さんは立ち飲みや角打ちが大好き。

で、とりあえず新京極の「スタンド」に入った。
ぶた天、きずし、ポテサラといくつか頼んでふと見ると、
もう数十年ここに棲みついたような顔の中原さんがいる。

なんなんだ、このなじみかた、溶け込みかた、似合いかた。

時々ジャブを出して、からかいながら楽しく呑んで次の店へ。

河原町から一筋東の裏寺。
うちの近所のバー「Mike's」のマイクさん、榊原直哉さんはここ裏寺の出身である。
少年時代のマイクさんが見た景色は何も残っていないけど、
裏寺は独特の匂いがする町だ。
河原町と新京極のはざまの、なんだか町のはらわたのような空気がある。
最近はきれいになってしまったけど。

「たつみ」に入った。
立ち呑み、椅子、座敷とあるのに、メニューも値段もすべて同じ。
「それならやっぱり、立ち、でしょう」と中原さん。
メニューは京都らしいものが多く、「ずいき酢」「いちぢくの胡麻和え」「鯖へしこ」など。
へしこは煮切り酒でけ出しをしてあるらしく、マイルドな仕上がり。
いちぢくは、中原さんのアンテナにひっかかったようで、
次のいちぢくの季節にヒグラシ文庫でいただくのが楽しみ。
私としては、メニューにあるのにできませんと言われた
「かますご焼き」にハゲシク未練を残してしまった。

そこからぐっと気分を変えて、先斗町十五番路地の「実穂」へ。
おかあさんはいなくて、裕子ちゃんだけだったけど、
ひさしぶりの「実穂」を満喫。
こういう店は京都にしかない。

実穂.jpg


もう一軒行きましょうと中原さんにうながされて行った、
西木屋町の店で、またしても私は、


うっ。

となってしまった。
今回は、うっ。どころではない、げげげげげーーーっである。


またしても、とーきちがいたのである。
私は初めて行った店だし、なぜこんなとこにとーきちがいるのか、まったくわからない。

「にょほほほほっ。カナンしぇんしぇい!とーきちの実力がわかりましたかァー??
とーきちは、とーきちは草でございますっ」

とか、わけのわからんことをほざいているが、とーきちの行動を見ているうちに、
実は、この店のお兄ちゃん目当てであることがわかってきた。

そう、とーきちは男が好きなんである。



booz'k.jpg

                                 booz'kのこうちゃんと中原さん


さらに流れ、たどり着いた「booz'k」。
いつも必ずここに帰ってくる、というバー。
マスターの山本晃次、こうちゃんとも長いつきあいだ。
明日、太秦でハモを食べることになってるというと、
ぜひ参加したいと中原さんは言って、一足先に帰っていった。


広沢池.jpg




そして翌日、泉涌寺の当番を終えて、太秦のたかっちゃんこと吉田孝司翁の車で西へ。
夕暮れ時の広沢ノ池でしばし遥かな景色と空を眺めて、
中原さんと合流し、太秦「とっくん」へ。

はも.jpg


はもまつ.jpg


久しぶりのはもしゃぶ、松茸入り、玉ねぎも相性よし。
さらなる牛タン焼き、雑炊ができるころに、
カメラマンのポイこと田口葉子ちゃんもやってきた。

牛たん.jpg


そこから、タッペギを呑みに近所の「まだん」へ。
私はここの上澄みが好きなのだが、今日は中と白しかないという。
それでも、キワキワのおいしさ。



たかっちゃんとポイと中原さんのあいだで、
何か楽しそうなたくらみも芽生えているようだ。

京都と鎌倉を巻き込んだ動きが出てきている。
なんか、楽しくなってきた。



中原さん。

私はお互い晩年になって知り合えた、得難い人だと、
いづれ友達に昇華できればと思っています。






posted by 瓜南直子 at 13:50| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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