みょみょっと角が出た。
チャンドラー方式というものがあるらしい。
作家のレイモンド・チャンドラーのことである。
「たとえ一行も書けないにしても、とにかくそのデスクの前に座りなさい、
とにかくそのデスクの前で、二時間じっとしていなさい」
というチャンドラーのメソッドを、小説を書く村上春樹が「大切なことかもしれない」と
心の内にピンで留め、「チャンドラー方式」と名づけたものだ。
ただし、デスクに座っている間,手紙を書くとか本を読むとか猫と遊ぶとか、
ほかのことをしてはダメで、ひたすら座っているのだそうだ。
身体のリズムから、何かが生まれてくるのをじっと待つのである。
これが私にはとてもしっくりくる。
昔から、何も浮かばない冴えない、何していいのかわからない時は、ただただ画室の机に座っている。
チャンドラーさまと違うとこは、何かしてしまうところだけど、基本は「篭る」ことである。
こういう時は、気分転換なんかしても、楽しくなんかないんである。
もちろん、急ぎの仕事などはしていたけれど、
自分の制作の道筋にどんな光をあてて陰影を創るか、という司令塔たる部分を盤石にしないと動けない。
よく働く小人さん、絵描きのカナンが働けないのだ。
で、籠った。もちろん用事や仕事や買い物には出かけるし、
電気切るぞとおどかされば電気代も払いにゆく。ごはんも作る、
twitterもfacebookも見るし投稿もする。
けど、ただ一日数時間 画室にひとりでいるようにした。
あと、落ち葉掃除がいい。ただただ落ち葉を集めて、庭の隅の落ち葉の墓場に積むだけの簡単なお仕事。
腰にはくるけど、こういう黙々とした作業が効く。
なんて言うか、お声がかかるのを待ってる感じ。
お声がかかりやすいようにあれこれ環境を整えてる感じ。
その間はやっぱりくるしい。あらゆる雑念と戦う感じもあるし、
そういう雑念が生まれる自分を嘆いたりもして、いろいろとたいへんだ。
けど2、3日前から何か見えてきた。くすんで見えてた描きかけの絵も、動いて見えるようになった。
そして、「これ、つかみなよ」って感じの角が、みょみょっと出てる。
よし、これつかんでぶんぶん振り回してもらおう。
昨日は、ようやくノートにおおまかな制作の予定を書きこめるまでになった。
ここから仕事を割り振って、やっとよく働く小人さん、絵描きのカナンの出番がやってくる。
気分転換などはこれからだ。お散歩もこれから。
と、思ってたら、放置してた注文作品の催促が来て焦ってますが、
みょみょっの角をつかんだ私は堂々としていられるのだ。
ラベル:レイモンド・チャンドラー 村上春樹
瓜南直子さんの文章と作品、ここに生きていますよ。
そうですね。私も毎日、原稿用紙十枚は書いてますね。
わたしも、がんばってます。
チャンドラー方式実践してますよ・・。