2012年02月26日

いつもなおかず11. 小あじの南蛮漬



小あじ南蛮漬.jpg





どんなものでも注文を受けてから作る店があった。

マスターは、元銀座のバーテンダーだったという。若い頃の写真を見るとなかなかの色男だ。
いろいろな浮名を流し尽くして、シェイカーを包丁に替え、麻雀の牌でなく魚を切ることを覚えて始めた店だった。

もともと器用なタイプではないけど、誠実にていねいに作る。
それも、注文を受けてから、という揺るがぬ鉄の方針があるので、時間がかかる。
でも、蛸の薄作り、カワハギ薄作り、サザエ刺身、本ミル貝、あん肝、釣りものの〆鯖などなど、
新鮮でおいしくボリュームたっぷり、そしてどこよりも安かった。
だから、料理ができるのをみんなおとなしく待っていた。

蟹などは、全部殻から身を出してくれた。
さんまの刺身を頼むと、ワタだけ別にホイル焼きにしてくれた。
明日まで置いといても売り物にならないものは、遅くまで飲んでる常連客にサービスで出してくれた。
それも、サザエや本ミル貝やウニなんかを、である。

遅めの時間に頼んだチャーハンや雑炊には、その日の具材がいろいろ入っていた。
高菜の雑炊を頼んだのに、毛蟹の身が半身分入ってたこともある。




めったに予約などしない私だけど、一度、遠くから食いしん坊の友達が来た時、
これから一緒に行くからー、と電話して行ったことがある。
店に入ってカウンターに座るなり、ハイお通し、とあじの南蛮漬が出た。

え?お通し?これが?

だって、大ぶりの鯵が2本も盛ってあるんだもの。
しかも、ここの南蛮漬は、漬けこんで冷めたものでなく、
揚げたてに熱い甘酢をジュンッとかけるものなのだ。
「熱いうちがおいしいから、熱いうちに食べて」
なんて言われて、せっせと食べたら、もうもうじゅうぶんにメインディッシュ。
これ食べてから、サザエやかわはぎの薄造りを食べるのはなんとももったいない。

マスターはサービスのつもりだったんだろうけど、
うれしいけど、お腹いっぱいになっちゃうじゃないのぉー。



南蛮漬というと、この一件を思い出す。
マスターは、たくさん食べる人を見ているのが好きだったようだけど、
自分がほとんどものを食べないので、加減がわからなかったのだ。

いい店だった。
10年近く前にマスターが亡くなり、店は代替わりして全く別ものになってしまった。
ビジネスという言葉が似合わない店、というのがあったんだ。




南蛮漬S.jpg

                                              漬けてから2日後の南蛮漬




南蛮漬のあじは、やっぱり小あじで行きたい。
大きな鯵を骨まで食べられるように揚げると身が痩せてしまうし、なんとなく義務感にかられてしまう。
小あじなら、鉢にたくさん盛ってもいいし、2,3匹を小皿に盛り付ければ酒の肴にちょうどいい。
漬けた翌日からが味がなじんでおいしいけど、小あじならその日でもいただける。



小さくても、魚の下ごしらえは一緒だし、それなりに手間はかかるので、
2段階に分けて作ることにしています。

お腹を出して、エラをはずし、中を歯ブラシで洗います。
海水より少し濃いめの塩水に10分ほど浸けて、ザルか網バットにあけておきます。

と、ここまでが下処理です。
自然と水が切れてその後の仕事がしやすくなるので、そのまま冷蔵庫に入れて半日置いておきます。


で、半日後、ほとんど水気をふかないでいい状態になったあじに粉をまぶすわけですが、
小麦粉派と片栗粉派がいます。
もう、これはもう好みなんだけど、私は片栗粉派。つまりカリッとより、しっとり系。


漬け汁は、出汁と酢、みりん、同量くらいに淡口醤油を合わせたくらいが好みです。
ここに鷹の爪を入れて、火にかけて温めておきます。
揚げたての小あじの油を切って漬けて行きます。薄切りの玉ねぎも一緒に。
新玉ねぎは冷めてから入れたほうが、独特の甘みと食感が楽しめてうれしい。

漬け汁を入れる容器は、火にかけられて、そのまま保管できるホーローのバットが便利です。


タカベや小鯛、ままかりなどで作ってもいいですね。


今は、漬け汁をちょっと切って、パンにはさんで食べるのもいいなー、とたくらんでるところ。
おいしい粉で焼いた、ちょっとフカッとしたパンにレタスやトマトと一緒にはさんで。








posted by 瓜南直子 at 17:43| Comment(0) | いつもなおかず | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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