2011年08月05日

【寝目めも手帖】頁 其の七「天国と地獄」



杉並の井荻で、ラーメン屋のはしごに連れていかれる夢を見た。

夢の中の井荻の町は、古い劇画の私鉄沿線の駅前のようなたたずまい。

私は、背中にギターを背負った案内人にうながされて、ラーメンツアーに行くらしい。




一軒目【支那ちゃいな】


かんすいがきつくて、その匂いにムッときた。
ゴリゴリの皮つき豚の角煮と、スジスジの支那竹がのっていた。

壁のあちこちに、「自慢の手打ち!」と太いマジックで書かれた黄色い短冊が貼られている。
しかも一字ごとに赤でぐるぐる強調してあった。
文字は、極端に右上りだ。
その自慢の麺は極太で、タコ糸のようにボソボソする。
一軒めから、いちばん苦手なタイプのラーメンを食べるはめになってしまった。

私は、ギターを背負った案内人に、どちらかというと細い麺が好みであると伝えた。
案内人はうなづいて、では次はすっきり系をと言って【支那ちゃいな】を出た。




二軒目【わんこ屋】


店の名前を見ただけで、すべてが理解できた。

細長いテーブルに座ると、スープの入った大きなどんぶりが出てきて、
横に立ったおねーさんが、即座に麺を入れる。
たしかに細麺のあっさり醤油味で好みのタイプのラーメンだ。

しかし、最後のひとすすりを終えると、即座におねーさんが替え玉を投入する。
そのたびに、おねーさんはテーブルの上の数字の木札を架け替えるのだ。

いったい私は何玉食べたのだろう。
キメキメのポーズで入口に立っている、ギターを背負った案内人にすがるように視線を送った。




三軒目【天国と地獄】


ゴミゴミした路地を抜けると、
井荻の街が、いきなりブレードランナー化した。
いや、黒沢明の「天国と地獄」の方が近いかも知れない。
戦後の闇市のマーケットのようだ。

と思っていたら、着いた店の看板には【天国と地獄】と書いてあった。


バラックのような、雨漏りのする店。
天井を見上げると、板のすき間から、どんより曇った空が見える。

厨房をはさんでカウンター式に、天国席と地獄席がある。椅子はベンチだ。

お客さん、どちらに座りますか。


天国席は、ほぼ満席。地獄席はガラガラである。
カウンターは細く長く、奥の方は暗くてよくみえない。
真ん中の厨房では、麺を茹でる大きな鍋から湯気が上がっている。

少し待って天国席に座ろうかと思ったけど、
まあ空いてるから、と地獄席に座った。

見れば地獄席でラーメンを食べているのはアリクイやカモノハシのような人たちだった。
かわうそみたいな人もいる。

ラーメンを食べるのに向いた造形でない方ばかりなので、ひどく食べにくそうだけど、
モチャモチャ言いながらおいしそうに食べている。
カモノハシさんは、麺が喉を通りにくいのか、
時々宙を見上げて、目を白黒させながら、ウッウッグゥーとうなっては喉から胸元をなでる。


正面の壁のメニューを見ようとした時、
入口から入って来た風で、鍋の湯気が流れ、
天国席の人たちの顔が見えた。


そこには、笑顔がズラリと並んでいた。
お箸で麺を上下しながら、正面の宙に向かってニコニコ笑っている。
食べるでも話すでもなく、ただただ幸せに満ちあふれた笑顔だけを送っているのだ。


ぞぞぞぞぞぞーーーっ。


こわっ。これはこわいっ。ぱ、ぱらいーそだ、天国病だ。
ぱらいーそには行きたくない。
あっちに座ったら最後、ああなってしまうのだ。あぶなかったー。

そして、このズラリの笑顔を見ながら食べなくちゃいけないのが地獄、というわけだったんだ。

やっとわかった。


身体が凍りついたとこで目がさめた。
ひどく胃が痛かった。




posted by 瓜南直子 at 16:56| Comment(0) | 寝目めも手帖 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年08月02日

【寝目めも手帖】頁 其の六「下品な鮨屋」



とても下品な鮨屋の夢を見た。


A4大の中トロのシートが3枚と、握ったすし飯が出てきて、
お好きにお召し上がり下さいと言う。

隣の人はくるくる巻いて齧っている。
手が脂でベトベトになりそうだし、そんな食べ方やだなぁ。


と、私が困っていると、
板前がやってきて、包装紙のように包んで食べろと指南する。
横には大トロの角切りまである。
これを寿司飯に埋め込む人もいます、とうれしそうに言う。

それにしても、こんな薄くて大きいシート、
いったいどうやって作るんだろうと首をかしげていたら、
どら焼きみたいな顔した板前が、
これですお客さん、と言って
カウンターの上に、ドカッと丸ノコを置いた。

板前の胸には、大きなハンカチが安全ピンで留めてあり、
そこには、ヘタクソな字で「花板」と書いてあった。


このアイディアは、私のオリジナルです、
ものすごく大きなマグロでないと取れません、と胸をそらした。


他のネタも、とろとろサーモンだの、しまあじ腹身だの、
ソフトクラブから揚げ巻きだの、炙りカンパチかま握りだの、
脂ののりすぎたものやコッテコテのばかりで、見てるだけで胸焼けがした。

隣の客は、お椀になります、と言って出された
アボガドのすまし汁をうまそうに飲んでいる。

何かさっぱりしたものを下さい、というと、

ではこれをどうぞ、と今度はフルーツの盛り合わせが出てきた。

フルーツは、高そうな果物と南洋っぽい果物がおてんこもりで、
ハイビスカスや椰子の葉で、トロピカルな演出がされてあった。
さらに、まんなかにはストローを挿した椰子の実まであった。




永いこと鮨屋には行ってないけど、こんな店はいやだ。



posted by 瓜南直子 at 17:42| Comment(0) | 寝目めも手帖 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【寝目めも手帖】頁 其の五「ねじの夢」



ねじの山の上に寝ていた。


なぜ、こんなところに寝ているんだろう。
ちょっと体をずらすと、ねじがゴリゴリして痛い。

そうだ、思い出した。

自転車のスタンドのところに合うねじを探してたんだ。


と、姿勢を変えて探してみるけど、
ねじ山の大きさも脚の長さもピッチも、みんな少しずつ違ってる。

少し動くだけで、ねじが体に喰い込んで痛い。


みつからないし痛いしっていう、それだけの夢。


こういう夢は誰かにあげてしまいたい。





posted by 瓜南直子 at 17:17| Comment(0) | 寝目めも手帖 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月22日

【寝目めも手帖】頁 其の四「品川の犬」



友人の個展のオープニングに仕出しをしようとした。


準備が間に合わないので、材料鍋包丁まな板全部持って家を出た。

電車を待つ間も、ホームの階段の手すりの上で材料を刻む。


横須賀線の中でも仕込みをする。
床に座って、シートにまな板を置いてあれこれ刻んでいたら、
見かねた親切な小学生が手伝ってくれた。



品川の乗り換えの時も、ホームで仕込みを続ける。

いつのまにか雨になっていた。


飯台に酢飯をあけ、あなごや椎茸、絹さやに小柱、干瓢、胡麻を入れて、
しゃもじで切るように混ぜる。
酢飯のダマができては、いいお寿司にならないので、
ここはていねいにていねいに混ぜる。


ホームに山手線が入ってきた。
電車のドアが開いて、たくさん人が降りてくる。

あわてて片付けようとしてバランスをこわした。
飯台が傾いて、お寿司を半分ぶちまけてしまった。


ザーザー雨の降るホームで、泣きべそをかいていたら、
犬がやってきて、ばらまいたお寿司を片付けてくれた。

「駅員さんに見つかると叱られるからね」

と言って、犬はせっせとお寿司を食べる。


ありがとう、と犬にお礼を言って、
残りのお寿司をなんとか飯台に盛り付け、風呂敷にくるんで電車に乗る。

電車の窓から見ると、ホームには10匹以上の犬がお寿司を食べていた。
さっきの犬は、遠ざかる私にウィンクしてくれた。


日も暮れてきた。間に合わないかも知れない。
なかなか電車は目的の駅につかない。

焦る。焦る。焦る。



やっとのことで着いた駅。
ころがるように電車を降りて、階段を上り、改札へ急ぐ。

改札を出て急げば、あと5分ほどで画廊に着く。
背中の調理道具をガチャガチャ鳴らしながら改札にたどりついた。

ところが切符がない。
かばんもポケットもどこを探しても、切符が見つからない。
駅員は腕組みをして、こっちを見ている。
じーっと見ている。というよりにらんでる。
品川の犬が言うとおり、駅員さんは怖いのだ。


切符がないんですぅー、お願いですーー、改札通して下さいーーー、おーいぉぃぉぃと、
身をよじって大声で泣きながら目が覚めた。



posted by 瓜南直子 at 16:12| Comment(0) | 寝目めも手帖 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月21日

【寝目めも手帖】頁 其の三「兎の神様」



兎の神様がやってきた。


神様は、9匹の兎がかつぐ満艦飾のお輿に乗っていた。

ガラガラと、玄関の引き戸が開く音がするので行ってみると、
一行はすでに、土間に入り込んでいた。

先頭の年寄りの兎が「神様です」と言うので、
おそらく神様なんだろう。

後醍醐天皇みたいな唐様の冠をかぶった神様は、
口をぎゅっと閉じてあごを上げ、こちらを見ようとしない。
フランク・ザッパにちょっと似た感じの、
エキゾチックな顔立ちは、なかなかイカしていたが、
残念なことに、お輿の飾りも御召し物もペナペナで、
安物の熊手か羽子板のようだった。

カイゼル髭のつもりらしい、ゴマ塩のボソボソした髭もなんだかみすぼらしい。



「今日は、おまいのところにやっかいになる」

もったいぶって神様が言う。
滑舌はあまり良くなく、もごもごしてる。

「神様、どちらからお越しで?」

と聞くと、うれしそうに髭をねじりながら顔を突き出して

「どこだと思うー?」

とニヤつく。


寝起きを起こされて、いささか不機嫌な私は、とっさに

「日暮里ですか」

と言った。


兎の神様はムッとして

「軽く見るでない。ベトナムから来たのじゃ」



なんでベトナムぅ?というのが声になり、その自分の声で目が覚めた。


posted by 瓜南直子 at 15:12| Comment(0) | 寝目めも手帖 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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