2010年12月21日

「兎神国」の国造り

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                                           M8「綿虫」




30半ばになるまで、世間を寝過ごし、呑み過ごし、ようやく絵にたどりついた。

1989年の夏のことである。

手探りで見つけた王国に「兎神国」という名をつけ、その地図をなぞるように絵を描いてきた。兎神とは月である。ひのもと日本によりそうようにある国だとは、もっと後に気づくことになる。

言葉、文字、物語…。言葉の切れはしと形を結びつけて、絵が初めて生まれていくのは、当時も今も変わらないが、ある明確なテーマのある個展をして行きたいと思い、それを展開できたのは柴田悦子画廊での数回の個展のおかげだと思う。

初期型の珍品がさらされるのは、内側を鷲掴みにして、取り出され、裸にされるようできまり悪く恥ずかしい。だが、何を云う、自らすすんでやってきたことでないのと自分をはげまし、はげまし。

まだまだ描きたいものは、うずたかく裏山に積んである。

どうぞ、みなさん、これからも私に絵を描かせて下さい。







2007年の柴田悦子画廊での個展『今昔物語』のパンフレットに載った文章である。

これは柴田さんが挨拶文を書くためのテキストとして、私が走り書きしたものだったのだが、FAXを受け取った柴田さんは、作家の生の声が聞こえてくる、と言って、そのまま載せてしまった。


『今昔物語』とは、絵描きとしての、瓜南直子の今昔なのである。貸し画廊で発表していた頃の作品と、近作新作を対比させる、という試みで前期後期に分けて展開した。しかも2年続けて。

たいした実績もない絵描きが、こんな集大成のような個展ができるなんて、私は何たる果報者であろう。


同パンフレットで柴田悦子女史のペンによる挨拶文には、こう書かれている。


「今は昔、絵と物語・詞は分かちがたく結びついていました。

絵から言の葉が流れ出し、言の葉から絵が紡ぎだされる−その蜜月の時代は遠くなりましたが、20世紀末・1990年に豊饒な物語世界を孕んだ作品を携えて絵師・瓜南直子が画壇に登場、太古のおおらかな精神を汲んだ絵巻を、少しずつ広げては心躍る世界へと誘ってくれています。

『絵でなくては伝わらないものを、なんとかしてやらなければならない』

と初めて絵筆を握ってからの歳月、瓜南直子のたらした矛の先のしずくは色々な『たましい』を生み出し、歴史や自然のあわいに漂う精霊となって長大な時間や空間を流離するという暗喩に満ちた『物語』となりました。」




書き写していて、しだいに背筋がのびてきた。

さて。次の物語。

私は描ける間、ずっと「兎神国」の国造りをしてゆくのだ。


     (瓜南直子のブログ 2010年02月14日 『今昔物語』より再掲)





〇「兎神記拾遺〜巻之一」と題して、近作と新作による個展をいたします。

2011年1月24日~2月4日 銀座森田画廊


写真は個展のDM用の作品「綿虫」。新作はあと2点、30号と8号の発表を予定しています。

小さな画廊の空間に、兎神国の地図を描いてみたいと思っています。










posted by 瓜南直子 at 11:54| Comment(0) | 個展は麻薬。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月12日

「ストーリーテラーズ 小説と絵画展」


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 33名の美術家が、純文学や娯楽小説、詩などを題材に作品を制作した展覧会「ストーリー・テラーズ 小説と絵画展」が、10月20日〜26日 日本橋高島屋で開催された。10月 27日〜11月2日には高島屋横浜店に巡回し、12月1日〜7日には、JR名古屋高島屋に巡回する。

 私は、小説家盛田隆二さんのデビュー作「ストリート・チルドレン」と断章形式の小説「エーテル密造計画」を選び、どちらを出品しようか迷ったあげく、結局2点とも展示させていただいた。

 今回の企画は、まるで私のためにあったようで、下絵が何枚も出来てしまった。そして気がつけば、「わたしも描いて」「おれは絵になるぜ」という小説や詩が列を作って待っていた。次の個展のモチーフが、あちらからわらわらとやってきたのである。いわば「ひとりストーリーテラーズ」をやってしまおう、と思ったのだ。モチーフをいただきながら、自分の土俵でどう勝負をつけるのか、今のところ自分でも全く読めない。でも読めないからわくわくだし、興奮する。ここでぐずぐすしていると、モチーフがみんな手に手をとって逃げて行ってしまいそうだ。


 大きなバネを隠し持ち、いざとなるとぴょーんっと飛んで行くタチの私は、さっそく次の個展を企み、「ギャラリー・アートもりもと」に話を持ち込んだ。「ギャラリー・アートもりもと」の佐々井智子さんは、以前から知っているけど仕事をするのは初めて。話をしていて、この方なら安心して制作に没頭できそうだと思った。

 およそ絵描きなんてものは、事務的なことは後まわしになりがちで、画廊サイドがそのあたりをサポートしてくれ、お尻を叩いてもらうくらいでないと安心して制作できない。佐々井さんは、スケジュール、企画書その他を文書にして下さるという。ダイレクトメールやパプリシティ関係の計画、スケジュールも私は何の心配もしなくてよさそうだ。条件面でも、お互いに納得してから始めましょうと言って下さった。これは至極あたりまえのことなのだが、そのあたりは霧の中、というケースも少なくないので、とても心強かった。そして何より、「ひとりストーリーテラーズ」という私のイメージに強く興味を持って下さった。

来年は、この制作を中心に置いてすすめてゆく。再来年の春前あたりにできればと思っている。夏には「ざ・てわざ展」があるので、春からはそちらに集中したい。


そして、森田画廊では近作展をすることに決めた。30号と6号くらいの小品の新作を発表すべく、制作中である。こちらは、1月24日から2月4日まで。サブタイトルは「兎神記拾遺〜巻之一」(仮)。私の心にある「兎神国」という国のかたちをさぐっていくのが、生涯のテーマだと思っている。そのあたりについては、「ブログ展覧会」http://bit.ly/cAUOw6http://bit.ly/aimcj1 やコチラ→ http://bit.ly/bl4Kx4 をご覧下さい。



個展がないと、私はクラゲのようなもので、ふわふわフラフラと適当にただよっているだけなのだ。













posted by 瓜南直子 at 12:07| Comment(0) | 個展は麻薬。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月14日

『今昔物語』

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30半ばになるまで、世間を寝過ごし、呑み過ごし、ようやく絵にたどりついた。

1989年の夏のことである。

手探りで見つけた王国に「兎神国」という名をつけ、その地図をなぞるように絵を描いてきた。兎神とは月である。ひのもと日本によりそうようにある国だとは、もっと後に気づくことになる。

言葉、文字、物語…。言葉の切れはしと形を結びつけて、絵が初めて生まれていくのは、当時も今も変わらないが、ある明確なテーマのある個展をして行きたいと思い、それを展開できたのは柴田悦子画廊での数回の個展のおかげだと思う。

初期型の珍品がさらされるのは、内側を鷲掴みにして、取り出され、裸にされるようできまり悪く恥ずかしい。だが、何を云う、自らすすんでやってきたことでないのと自分をはげまし、はげまし。

まだまだ描きたいものは、うずたかく裏山に積んである。

どうぞ、みなさん、これからも私に絵を描かせて下さい。

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2007年の柴田悦子画廊での個展『今昔物語』のパンフレットに載った文章である。

これは柴田さんが挨拶文を書くためのテキストとして、私が走り書きしたものだったのだが、FAXを受け取った柴田さんは、作家の生の声が聞こえてくる、と言って、そのまま載せてしまった。


『今昔物語』とは、絵描きとしての、瓜南直子の今昔なのである。貸し画廊で発表していた頃の作品と、近作新作を対比させる、という試みで前期後期に分けて展開した。しかも2年続けて。

たいした実績もない絵描きが、こんな集大成のような個展ができるなんて、私は何たる果報者であろう。


同パンフレットで柴田悦子女史のペンによる挨拶文には、こう書かれている。


「今は昔、絵と物語・詞は分かちがたく結びついていました。

絵から言の葉が流れ出し、言の葉から絵が紡ぎだされる−その蜜月の時代は遠くなりましたが、20世紀末・1990年に豊饒な物語世界を孕んだ作品を携えて絵師・瓜南直子が画壇に登場、太古のおおらかな精神を汲んだ絵巻を、少しずつ広げては心躍る世界へと誘ってくれています。

『絵でなくては伝わらないものを、なんとかしてやらなければならない』

と初めて絵筆を握ってからの歳月、瓜南直子のたらした矛の先のしずくは色々な『たましい』を生み出し、歴史や自然のあわいに漂う精霊となって長大な時間や空間を流離するという暗喩に満ちた『物語』となりました。」


書き写していて、しだいに背筋がのびてきた。

さて。次の物語。

私は描ける間、ずっと「兎神国」の国造りをしてゆくのだ。


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柴田悦子画廊
12:00a.m〜7:00p.m(日・祭日は6:00p.m)
〒104-0061 東京都中央区銀座1-5-1第3太陽ビル2F
TEL&FAX / 03-3563-1660 office@shibataetsuko.com

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posted by 瓜南直子 at 17:28| Comment(0) | 個展は麻薬。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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